平成22年4月1日から労働基準法が変わります2
前回の労働基準法改正に関する記事では、時間外労働60時間超の取り扱いと代替休暇について解説いたしました。
今回は、時間単位年休について解説いたします。
使用者は過半数組合または、労働者の過半数代表と以下の①から④までの事項について書面で協定した場合に限り、時間を単位にして有給休暇(以下、「時間単位年休」という。)を与えることができます。
①時間単位年休を与えることができる労働者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めます。
一部を対象外とする場合は、「事業の正常な運営」を妨げる場合に限られます。
取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
②時間単位年休の日数
5日以内に限ります。前年度から繰り越された分があるときは、その日数を含みます。
③時間単位年休の一日の時間数
合計何時間休ませたら一日分の年休とするのかを決めなければなりません。これは、一日の所定労働時間を下回らないように決定します。
一時間未満の端数がある場合には、時間単位に切り上げます。
変形労働制などで、一日の所定労働時間が異なる場合は、1年間の一日の平均所定労働時間を下回らないようにします。
④1時間以外の時間を単位とする場合には、その時間数
時間年休は必ずしも一時間単位で与えなくてもOKで、たとえば2時間を単位としてもかまいません。
ただし、1日の所定労働時間数に満たないものとしなければなりません。
時間単位年休の付与には労使協定が必要ですので、注意して下さい。
詳しくはこちら(厚生労働省のホームページ)にリーフレットが掲載されていますので、ダウンロードしてご確認ください。
平成22年4月1日から労働基準法が変わります
皆さんご存知でしたか?
平成22年4月1日から労働基準法が改正されます。
今回の法改正は、一見単純なように見えて、非常に複雑なので注意が必要です。
主な改正点は
①時間外労働に対する割増賃金の割増率の引き上げ
②年次有給休暇の時間単位付与
の二点です。
【割増賃金の引き上げ】
まず、上記①ですが、一カ月当たりの時間外労働が60時間を超える場合、50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならなくなります。
当面、中小企業は猶予されますが、大企業は待ったなしです。
猶予される中小企業の定義は以下の表1又は表2のいずれかに該当する企業です。
なお、従業員規模は企業全体をさし、事業所単位ではありません。
(表1)
小売業・・・・資本金5,000万円以下
サービス業・・資本金5,000万円以下
卸売業・・・・資本金1億円以下
その他の事業・資本金3億円以下
(表2)
小売業・・・・常時雇用する労働者50人以下
サービス業・・常時雇用する労働者100人以下
卸売業・・・・常時雇用する労働者100人以下
その他の事業・常時雇用する労働者300人以下
【代替休暇の新設】
50%以上の割増賃金に代えて、代替休暇を付与することが可能です。
ただし、労使協定が必要です。
この代替休暇が非常にやっかいです。
①代替休暇は半日、もしくは1日単位で与えなければなりません。
新設される時間年休と組み合わせて与えてもOKです。
②代替休暇を与えたとしても、25%以上の割増賃金は支給しなければ
なりません。
③代替休暇を与える場合には、60時間の時間外労働をさせた月の
月末から2カ月以内がリミットになっています。
④代替休暇として与えることができる時間は、法で定められた計
算式によります。
(1か月の時間外労働-60時間)×換算率
換算率=60時間を超える場合の割増賃金率(普通は50%)-60時間以下の割増率(普通は25%)
(「普通は」と記載したのは、それ以上の割増率を支払っている場合は、その割増率が適用されるためです)
たとえば、1か月の時間外労働が76時間だったとします。
上記の式に当てはめると、
(76-60)×25%=4時間
の代替休暇を与えることになります。しかし、この16時間(60時間を超える部分)についても25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
時間年休と組み合わせて半日もしくは1日単位にする必要があるので、実務上は個人個人の年休管理が煩雑になることや、手間をかけて代替休暇を与えてもコストメリットが小さいので、あまり活用されないのではないかと思います。
次回は、時間年休のお話です。